羨望の的として捉えるソラニンの世界

を今更、というタイトルになっていることは百も承知だ。

私もソラニンを初めて観たのは大学2年の頃。

確か、友人宅で深夜に酒盛りをしながら、だらーっと宮崎あおい見たさに観た記憶がある。

 

初めて観てから7年は経っているだろう。

Amazon Primeを色々物色して見つけ、懐かしくなって正月休みを使って鑑賞した。

 

ソラニンの世界観は7年前観たときのそれと異なり、とても愛おしい感情がこみ上げてきた。

 

なぜなのか。感じたことを書いておきたい。

 

ソラニンは、アジカンの歌詞にもある「ゆるい幸せがだらーっと続い」ていく物語だ。

作中で主人公の死もあるが、そこから急にトーンやリズムが変わるわけではない。

 

一定のトーンとリズムを保ったまま、はじめから最後まで物語は続いていく。

 

我々より上の世代の社会学者的感想を覗いて見ると、

ゼロ年代格差社会をありありと...」「終わりなき日常への不安」

等、宮台真司さんや宇野常寛さんなどの言葉を引用しているものばかりだ。

 

でも、若者から見ると、「そうじゃねえだろ」と思ってしまう。

このソラニンの世界観は美しく、羨望の的である世界観なのだ。

 

理由は、2つ。

 

1.閉鎖的、かつ半永続的なコミュニティ

2.メトロポリタンへのアクセス可能な範囲でのゆるやかな暮らし

 

1.について。

ソラニンでは、主な登場人物はほぼ5人で固定されている。

大学時代のサークルメンバーで構成されており、大学を卒業しても同じ関係を持続したまま親密な関係を築き続けている。

これは、現代の我々若者世代では持続した関係を維持することは難しい。

LINEやFacebookInstagram等、SNSでは常に人と接続しあっている。

接続しあっているということは、常に自身のコミュニティの関係情報をアップデートし続けていくということである。

そして、その常々のアップデートは周囲の友人にも可視化されている。

 

アップデートされた関係情報は「新しいコミュニティで仲良くやっているみたいで、自分は彼/彼女のNo.1コミュニティーではないかもな」「新しい仲良い人ができたんだろうな」とその人のSNSのアップデート情報を見ることでよそよそしさを醸成してしまう。

お互いに、遠慮し合うことで、本当は濃い関係でいたいと思い合っていても、「相手はそんなに自分のことを重要視していないかもしれない」という感覚に陥ってしまう。

自身と友人とのコミュニティの濃度が、相対化されて希釈されてしまうのだ。

 

そうして段々と連絡をとる頻度が自然と減り、知らない間に「年に一度集まるコミュニティ」に成り下がる。

コミュニティをアップデートする毎に、既存のコミュニティは希釈され、「年に一度の集まるコミュニティ」が積み重なっていく。

 

そうなると、ソラニンで描かれているようないつでもお互いが一番の仲間だと思え、接続され続け、関係が維持されているコミュニティは新鮮に見え、羨ましく感じるのだ。

 

作中は、トーンとリズムが保たれていると述べたが、その変わらないコミュニティの友人関係がそうさせているのではないかと感じる。

安定し、かつ強固なコミュニティを現代の若者は求めているところから憧れが生じているのではないかと思う。

 

2.について

これは1.と繋がるところである。

ソラニンのように外部環境の変化が少なく同じトーンとリズムで進む友情物語は、都心の郊外で進むことが多い。

 

これは、『東京フレンズ』(下北沢)や『NANA』(多摩)でも同じ(全部バンド関係の作品になってしまった)も同じである。

これで重要なのは、

「都心のリソースにアクセス可能な範囲での閉鎖的な外部環境」というイメージングがなされているからと感じる。

都心の郊外ということで、

・上京した人が多く、家族や土着の人間関係を無視できる

・「東京でビッグになってやる」というコンプレックスやハングリー精神を打ち消すことができる

これは、メトロポリタンでも、地方都市でも実現できない世界観だと思う。

都心の郊外は、閉鎖的なコミュニティを育み、きれいな同じトーンとリズムでつむぐ関係性を疑似体験することができるのだ。

 

(反対に、池袋ウエストゲートパーク等、都心が舞台になれば人間関係やそれを取り巻く環境もめまぐるしく変化する)

 

まとまりがなくなってきたが、ソラニンが描く世界は美しい。

誰にも邪魔されず仲良しの人たちと一緒に夢を追い、変なプレッシャーやハングリーさもない淡白さも醸し出すことができる。

それが、冒頭に述べた「ゆるい幸せがだらーっと続い」ていく感覚なのだ。

 

「許されることなら、この頃に戻りたい」「こういう人生を歩みたい」と今の若者が思って然るべき作品であると感じる。

https://goo.gl/TtGndC

 

 

あー、だらーっとしたい。